相続登記(遺産分割協議)

2023年4月13日

相続登記の義務化について

近年、土地や建物の相続登記がされないために所有者が不明となった土地や建物が、
防災・減災、まちづくりなどの公共事業の妨げになっていることが社会問題となっている。
この解決を図るため、法律が改正され、令和6年4月1日から、相続登記の申請が義務化される。
また、同日以前の相続であっても、相続登記がされていないものは、義務化の対象になる。
相続登記をすることは、土地や建物の所有関係をはっきりさせる(相続によって自分が所有していることを他人に主張する)ことができるようになる。

相続登記の申請の流れ

遺産分割協議による相続登記の申請は、通常以下の流れで行われる、

上記のそれぞれのステップについて詳しく解説する。

手順① 戸籍関係書類の取得

相続の開始があったことを証明し、また、法定相続人を特定するための戸籍関係書類である
「戸籍謄抄本」・「除籍謄抄本」を取得する。
これらの書類によって、法定相続人を特定する(他に相続人がいないこと)を証明できる。

最新の戸籍関係書類のイメージ

「戸籍謄抄本」および「除籍謄抄本」の取得(請求)は、それぞれの戸籍ごとに、
本籍のある市区町村に請求する。(転籍等により本籍が変わっている場合には、
その本籍ごとに、本籍のある市区町村に請求する必要あり)
具体的な請求方法や手数料等については、自治体によって異なるためホームページ等で確認する。

法務省ホームページ
「戸籍ABC(Q6~ )」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji04_00032.html

手順② 遺産分割協議・協議書の作成

この局面では、相続人の間で、被相続人の財産をどのように分配するかどうかを協議を行い、
結果を「遺産分割協議書」として書面を作成する。
法務局では遺産分割の方法や作成についての相談を受けることができないため、
具体的な相談は法律の専門資格者や法律相談窓口で問い合わせること。

遺産分割協議書のイメージ

手順③ 登記申請書の作成

法務局(登記所)に提出する登記申請書を作成する。
登記の申請は、作成した登記申請書(書面)を法務局の窓口に持参する方法や、
郵送する方法のほかに、法務省の「登記・供託オンライン申請システム」で登記申請書を作成し、
これをオンラインで申請する方法

「登記・供託オンライン申請システム」のホームページ
https://www.touki-kyoutaku-online.moj.go.jp/

法務局ホームページ「不動産の所有者が亡くなった(相続の登記をオンライン申請したい方)」
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/fudosan_online03.html

登記申請書は、法務局ホームページから様式をダウンロードして作成することができる。

登記申請書の記載例 具体的な解説は以下

上記の登記申請書は、法務太郎(夫)、法務花子(妻)、法務一郎(長男)、法務温子(長女)の4人家族の場合で、
法務太郎(夫)が亡くなり(この場合の法務太郎のことを「被相続人」という。)、遺産分割協議の結果、
法務太郎(夫)が単独で所有していた土地・建物について、法務一郎(長男)と法務温子(長女)が権利を2分の1ずつ相続し、
法務花子(妻)は相続しないというケースを例に作成している。

不動産登記の申請書様式について
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/minji79.html

<登記申請書の作成における共通の注意事項>

① 登記申請書は、A4の用紙(縦置き・横書き。紙質は長期間保存することができる丈夫なもの(上質紙等))を使用し
(用紙の裏面は使用せず、印刷する際は片面印刷で印刷する。)
登記申請書と併せて提出する必要のある添付書類(添付情報)とともに、左とじにして提出すること。

② 文字は、直接パソコン(又はワープロ)を使用して入力するか、
黒色インク、黒色ボールペン等(インクが消せるものは不可)で、はっきりと記載すること。
鉛筆は使用することができない。

③ 登記申請書が複数枚にわたる場合は、申請人(申請人が二人以上いる場合は、そのうちの一人で可)
が、ホチキスどめした各用紙のつづり目に契印をすること。

<各項目についての説明>

・登記の目的

相続登記は、所有権の移転の登記に該当するため、「所有権移転」と記載する。

・原因

相続が開始した日(被相続人(亡くなった方)が死亡した日)を記載。
遺産分割協議が成立した日ではない。

・相続人

(説明1)
被相続人(亡くなった方)の氏名を記載。

(説明2)
相続人(土地・建物を相続した人)の住所と氏名を住民票の写しに記載されているとおりに記載し、
相続(遺産分割協議)によって取得した権利の持分を記載。

また、相続人のうち、実際にこの登記申請をする人(注)については、記載例のとおり「(申請人)」と記載し、
「印」の箇所に押印(認印で可)。

(説明3)
住民票コード(住民票の写し等に記載されています。)の記載は必須ではないが、
住民票コードを記載すると、登記申請書と併せて提出する必要のある住所証明情報(住民票の写し)の添付を省略することができる。

(説明4)
提出された登記申請書の内容に誤りがあった場合や、提出書類に不足等があった場合には、
法務局(登記所)の担当者から連絡するので、平日の日中に連絡を受けることができる電話番号(携帯電話の電話番号等)を記載。

・添付情報

① 「登記原因証明情報 住所証明情報」と記載。

② 登記の申請をする場合には、登記申請書と併せて、添付情報として、
登記原因を証する書面や所有者として登記される相続人の住所を証する書面を登記所に提出する必要がある。

・登記識別情報の通知希望

登記完了後に法務局(登記所)から通知される登記識別情報の通知を希望しない場合には、□にチェックをする。

・登記申請の年月日及び申請先の法務局

(説明)
① 登記の申請をする年月日を記載。
② 登記の申請先の法務局(登記所)を記載します。登記の申請は、
その申請する不動産の所在地を管轄する法務局(登記所)に対してする必要がある。
管轄の法務局(登記所)については、法務局ホームページに案内あり。

法務局ホームページ「管轄のご案内」
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/static/kankatsu_index.html

・課税価格及び登録免許税

相続登記の申請をする場合には、法律(登録免許税法等)で定められた登録免許税を納付する必要がある。
登録免許税の計算方法については、法務局ホームページにて掲載。

① 課税価格
市区町村で管理している固定資産課税台帳の価格がある場合は、その価格を「課税価格」として記載。
固定資産課税台帳の価格は、毎年、市区町村から通知される固定資産課税明細書に記載されている。
なお、登録免許税が免税される場合には、課税価格の記載は不要。

② 登録免許税
登録免許税額を記載。登録免許税額は、原則として、課税価格に税率(相続による所有権の移転の登記の税率は 1,000 分の 4)を乗じて計算した額で、
その計算した額が1,000 円に満たないときは、1,000 円となる。

・不動産の表示

(説明1)
登記の申請をする不動産の表示を、登記事項証明書等に記載されているとおりに正確に記載。

(説明2)
不動産番号を記載した場合には、土地について、土地の所在、地番、地目及び地積の記載を、
建物について、建物の所在、家屋番号、種類、構造及び床面積の記載を、それぞれ省略することができる。

添付情報(登記申請書に添付する書面)

遺産分割協議による相続登記の申請では、「添付情報」として、一般的に、
登記申請書に次の書面(添付書面)を添付して法務局(登記所)に提出する必要がある。
この添付書面は、原本を添付する必要があり、コピー等は不可となっている。


登記原因を証明する書面(登記原因証明情報)
┗戸籍関係書類
①被相続人の出生から死亡までの経緯がわかる戸籍関係書類(戸籍謄抄本、除籍謄抄本)を添付する。
これは相続が開始したことを証明するとともに、法定相続人を特定するために必要となるものである。

②遺産分割協議の当事者である相続人全員の戸籍関係書類(戸籍の記録事項証明書(戸籍謄抄本)を添付する。
これは、遺残分割協議時において、その当事者が相続人の地位を有していることを証明するために必要となる。

③なお、「被相続人の登記上の住所」が「戸籍関係書類に記載された本籍(戸籍謄抄本・除籍謄抄本)」と頃なる場合、
「戸籍上の被相続人」と「登記上の所有者」が同一人であることを証明するため、次のいずれかの書類を添付する。
┗住民票の写し(被相続人の本籍および登記上の住所と同じ住所が記載)
┗住民票の除票の写し(被相続人の本籍及び登記上の住所と同じ住所が記載)
┗戸籍の附表の写し(戸籍の表示および登記上の住所と同じ住所が記載)

これらの手続きをはじめとする相続手続きを円滑化するために、
法務局の「法定相続情報証明制度」も活用すること。

遺産分割協議書
遺産分割協議書には、相続人全員が印鑑証明書と同じ印(実印)を押印し、その印鑑証明書を各一通添付する。

住所を証明する書面(住所証明情報)
相続人全員の住民票の写し(市区町村が発行した証明書の原本)を添付する。

手順④ 登記申請書の提出

作成した登記申請書及び登記申請書に添付する書面(添付書面)を、
その申請する不動産の所在地を管轄する法務局(登記所)の窓口に持参する方法又は郵送する方法により、登記の申請を行う。
郵送によって登記の申請をする場合は、登記申請書及び添付書面を入れた封筒の表面に「不動産登記申請書在中」と記載の上、
書留郵便により送付する。
登記の申請先となる不動産の所在地を管轄する法務局(登記所)については、法務局ホームページに記載されている。

法務局ホームページ「管轄のご案内」
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/static/kankatsu_index.html

手順⑤ 登記完了

法務局(登記所)での登記が完了すると、法務局(登記所)から、
登記完了証及び登記識別情報通知書(登記識別情報を記載した書面)が交付されるので、これを受領することで全ての手続が完了する。
登記完了証及び登記識別情報通知書は、登記所の窓口で受領する方法又は郵送により受領する方法がある。
登記所の窓口で受領する場合は、登記申請書に押印したものと同じ印鑑が必要。
郵送により受領する場合は、宛名を記載した返信用封筒及び郵便切手を登記申請書とともに提出すること。

登記完了証及び登記識別情報通知書の再発行・再交付はできない。

登記識別情報について

登記識別情報は、登記申請手続における本人確認手段の一つであり
登記名義人本人による登記申請であることを登記官が確認するため、
一定の登記の申請をする際に法務局(登記所)に提供する必要がある情報のことを指す。
この登記識別情報は、申請した登記(一定の登記)が完了した後、その登記により登記名義人となった申請人に、
その登記にかかる物件及び登記の内容とともに、法務局(登記所)から通知される。
具体的には、アラビア数字その他の符号の組合せからなる12桁の符号で、
不動産及び登記名義人となった申請人ごとに定められる。

相続登記の申請の義務化について

所有者不明土地の解消に向けて、不動産に関するルールが大きく変わることとなった。
新ルールは、令和5年4月1日から段階的に施行され、令和6年4月1日からは、相続登記の申請が義務化される。

相続によって不動産を取得した相続人は、その不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならないこととされた。